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日本人投手が挑み続けるサイ・ヤング賞獲得への足跡ー大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希のドジャーストリオにかかる史上初の偉業

これまでメジャーリーグにおいて多くの日本人選手が活躍し、野手ではイチロー氏が首位打者や最多安打、盗塁王を獲得し、近年では大谷翔平投手が本塁打王や打点王に輝くなど、アメリカの地で歴史を刻んできた。投手も個人タイトルに届いた選手はいるなか、日本人選手が届いてない勲章が最優秀投手にあたる「サイ・ヤング賞」。これまでの日本人選手の挑戦を振り返りつつ、将来的にサイ・ヤング賞を獲得する選手が現れるのか検証したい。トップ画像:出典/Getty Images

Icône 30716468 1048529728619366 8600243217885036544 nYoshitaka Imoto | 2025/01/22

パイオニア・野茂氏は最多奪三振を獲得

投手としての日本人選手のタイトル獲得者を振り返ってみると、1995年に近鉄からドジャースと契約し海を渡った野茂英雄氏がトルネード投法を武器にメジャーで旋風を起こした。

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同年に13勝6敗、防御率2.54を記録した野茂氏は236奪三振を記録してメジャー1年目から最多奪三振のタイトルを獲得。その後もメジャーにおける日本人のパイオニアとして活躍を続けた野茂氏は、レッドソックスに在籍した2001年シーズンにも220奪三振をマークして2度目のタイトルに輝くなど、日本人投手の評価を高め、活躍する下地を作った。

さらに、2012年に日本ハムからレンジャーズへ移籍したのがダルビッシュ有投手で、日本で5年連続防御率1点台を記録して“無双状態”で海を渡った右腕には野茂氏を超える偉業が期待された。ダルビッシュは移籍1年目から16勝を挙げると、13年には277奪三振で、奪三振王のタイトルを獲得。さらに、コロナ禍のため短縮シーズンとなった20年には8勝を挙げて日本人選手では唯一の最多勝利のタイトルを獲得してきた。24年シーズンには日米通算200勝にも到達したダルビッシュは野茂氏と並ぶメジャー日本人投手のレジェンドの域に達したと言える。

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そんな両投手でも獲得できていないのがメジャーにおける投手最大の勲章と言えるサイ・ヤング賞。1956年に制定された当初は両リーグからひとりが選出されていたが、67年のシーズンから両リーグからもっとも活躍した1選手ずつが選ばれている。

2013年にはダルビッシュ、岩隈が上位に

全米野球記者協会所属の記者60人の投票で決まるサイ・ヤング賞だが、過去の日本人選手を振り返ってみると、野茂氏が鮮烈な活躍を見せたルーキーイヤーの1995年と16勝を挙げた96年にそれぞれ4位の得票数を得てノミネートした。西武からレッドソックスに移籍した松坂大輔氏が2年目の2008年に18勝3敗、防御率2.90の成績で野茂氏と同じく4位に名を連ねた。日本では1年目から最多勝を獲得するなど怪物として名を高めていた両者は日本選手のポテンシャルを証明したものの、トップ3に入るには至らなかった。

そんななか、2010年代を過ぎると、日本選手が次々にメジャーで実績を残し、サイ・ヤング賞獲得が視界に入る。13年にはダルビッシュが13勝9敗、防御率2.83で277奪三振はリーグトップの成績で、マリナーズで2年目のシーズンを過ごしていた岩隈久志投手も14勝6敗、防御率2.66の数字を残し獲得が期待された。しかし、最終投票はダルビッシュがア・リーグ2位で岩隈が3位。サイ・ヤング賞には21勝3敗、防御率2.90、240奪三振と白星で大台に乗せた当時タイガースのマックス・シャーザー投手が選ばれた。

また、短縮シーズンとなった2020年も両リーグで好調をキープした日本人選手に受賞のチャンスが訪れた。ア・リーグではツインズに所属していた前田健太投手がシーズン通して安定した投球を見せ、6勝1敗、防御率2.70と抜群の成績を残した。また、13年にランクインしたダルビッシュは8勝3敗で日本人初の最多勝のタイトルを獲得で防御率2.01と初受賞が期待された。しかし、前田はア・リーグ、ダルビッシュはナ・リーグでそれぞれ得票数で2位となり、悲願の日本人初サイ・ヤング賞を逃すことになった。

令和の怪物・佐々木がドジャースへ

日本人選手ではまだ受賞者が出ていないサイ・ヤング賞だが、今後可能性があり得るのはドジャース勢か。2022年にエンゼルスで15勝9敗、防御率2.33、219奪三振の成績を残し、サイ・ヤング賞投票で4位に入った大谷は25年シーズンから二刀流選手として復帰する見込みで、投手として完全復活できれば日本人投手として未踏の地へたどり着く可能性を秘める。また、24年にドジャースに加わった山本由伸投手は渡米前にオリックスで3年連続沢村賞に輝いており、日本での実績は歴代の日本人メジャー選手の中でも屈指。まだ26歳と若く、野茂氏やダルビッシュ、前田など、歴代の名投手が届かなかった領域は期待したいところ。

さらに、1月17日(日本時間18日)に発表されたのがポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた佐々木朗希投手のドジャースへの移籍。これで2023年に世界一に輝いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の侍ジャパンメンバー3人がチームメイトとなった。主軸投手として先発ローテも担った大谷、山本、佐々木というドジャースの日本人トリオがそのポテンシャルをメジャーで出し切ることができれば、日本人初のサイ・ヤング賞獲得への期待も膨らんでいく。

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これまでイチロー氏や大谷がシーズンMVPや個人タイトルを獲得し、野茂氏やダルビッシュも最多奪三振や最多勝に輝くなど日本人選手がメジャーの舞台でもその輝きを見せつけてきた。そのなかで、毎年のように好選手が海を渡り、コンスタントに成績を残し続ける投手からサイ・ヤング賞に輝く選手が現れるのかは今後の焦点となる。はたして、日本人史上初の領域に足を踏み入れる投手は誰か。