スティックに導かれた運命!瀬川真帆とフィールドホッケーの物語 vol.2
「挑戦こそ成長の源」。この信念を抱く瀬川真帆は、現在東京ヴェルディホッケーチームでフィールドホッケー選手として活動中。目標は2028年ロサンゼルスオリンピックで世界一になること。そのためには、日本全体の競技力を高めること、そして個々の成長が必要だと考えている。彼女はかつての日本代表のユニフォームを脱ぎ、一から再出発する覚悟で新たな挑戦に取り組んでいる。オフィスワークと競技生活を両立させ、時にはモデルとしても活動し、スポーツ選手の新たな道を切り開こうとする彼女の姿を、3話にわたるインタビューで紹介する。※メイン画像/松川李香(ヒゲ企画)
現在の東京ヴェルディでの活動
画像提供 / 本人(瀬川真帆)
東京ヴェルディでの挑戦は、私にとって新たな章の始まりでした。2021年の9月、私はこのチームに加わり、新たな舞台での挑戦をスタートさせました。去年はゲームキャプテンとしてチームを牽引し、その経験は私に多くの学びを与えてくれました。しかし、今年は自分の目標とチームのバランスを考え、大きく表に出る役割は避けることにしました。それでも、チームの戦術的な部分、特にプレスやアウトレットの指導は続けています。
選手時代に受けていた指導を、今度は自分が行う立場になったのです。例えば、「どうしてそこにいたのか」という理由を持たせる指導や、次のパスを見据えたプレーを考えさせるような指導を重視しています。チームにはまだまだ課題も多く、強化が必要な部分がたくさんあります。そのため、私自身もコーチングを学びながら、選手としてプレーしつつチームを支えています。
選手としての経験を活かし、チームの成長に貢献することが私の使命です。東京ヴェルディでの活動は、私にとって自己成長の場であり、チームの一員として共に勝利を目指す大切な時間です。これからも仲間たちと共に、より強いチームを作り上げていきたいと思います。
ヴェルディへの移籍理由
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
以前は日本で最も強いのチームに所属していました。そこにおよそ8年間在籍しましたが、次第にただ強いチームでプレーするだけでは満足できなくなってしまったんです。ホッケーをもっと有名にしたり、スポーツを通じて日本社会を変えたいという思いが強くなる中で、この環境のままでそれが実現できるのか考えました。そして、それは違うと感じたので、チームを変えることに決めました。
東京ヴェルディを選んだ理由は、日本で唯一のクラブチームとして活動している点が大きな魅力でした。他のチームは実業団チームで、特定のスポンサー企業から資金を受けていますが、ヴェルディは複数の企業から資金を集めて活動しています。この企業との繋がりや地域との関係性を築き上げることで、ホッケーの価値を高めることができると思いました。そうした繋がりを通じて、ホッケーだけでなく地域や社会にも貢献できるという点が魅力的で、ヴェルディに入ることを決めました。
社会貢献とデュアルキャリアで成長する東京ヴェルディのアスリートたち
画像提供 / 本人(瀬川真帆)
東京ヴェルディとして、社会貢献や地域貢献の活動にも力を入れています。例えば、海洋プラスチックごみの回収活動や地域の清掃活動にも積極的に参加しています。また、女性アスリートとしての取り組みも行っており、婦人科の先生と連携して女性が自分の体にもっと興味を持てるような企画をしています。討論会などを通じて、女性の健康や体のことを学ぶ機会を提供しています。
さらに、ヴェルディの選手たちは全員がデュアルキャリア(競技と仕事の両立)を実現しています。競技と仕事のバランスを取りながら、競技の質を上げていく取り組みをしており、これは他のチームではなかなか見られない特徴です。このような環境を提供することで、競技者としてだけでなく、社会人としても成長できる場を作っています。東京ヴェルディは、こうした多面的な活動を通じて、ホッケーだけでなく地域や社会にも貢献する面白いチームです。
全力で取り組む日常が競技に活かされるアスリートの生き方
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
私は、日常の過ごし方がすべて競技に反映されると信じています。例えば、昨日も能登で震災支援のボランティア活動を行ってきましたが、その際も自分はアスリートではなく、ただの一人の人間であり、他の人と優劣はないと考えています。コートを一歩出れば、すべての人が平等であり、仕事においても同じです。仕事では自分の能力で評価されるべきだと思っています。
仕事で結果を出すことが、最終的に競技にも活かされると信じています。例えば、雑誌の撮影を依頼された場合でも、自分の力を100%発揮し、どうすればより良い結果を出せるかを常に考えています。プロ意識を持って、何事にも全力で取り組むことが重要だと思っています。そのため、日々の生活でも情報収集や自己改善を怠らず、競技と仕事の両立を意識して生活しています。
昔から負けず嫌いで、知らないことを知るのが好きでした。それに加えて、プロフェッショナルな人々が好きで、彼らが当たり前のことを当たり前にしっかりとできる姿勢や、細かいところに気を配る姿勢に惹かれていました。プロフェッショナルな人々の話を聞くのも好きで、その中で学ぶことが多く、自分も何かに携わるときは同じように意識を向けて取り組むようにしています。
料理人の祖父から学んだ行動の美学
撮影/松川李香(ヒゲ企画)
大元を辿ると、祖父の影響が大きいと思います。祖父は、いろんな料亭で修行を積みながら家族を支えていました。料理人としての姿勢は、「背中で見せる」というもので、言葉よりも行動で教える環境でした。そんな祖父から私は、一流の人がやっていることを見て、自分で実際にやってみて、経験を重ねることで自分のものにするという姿勢を学びました。
小さい頃から無意識のうちにそういった意識を身につけていたんだと思います。だからこそ、何事にもプロフェッショナルな意識で取り組んでいる人を尊敬しますし、そのような人に惹かれてホッケーや他のことにも興味を持つようになったのだと思います。
10年愛用のサロモンシューズとベルギー製のスティックで挑むホッケー人生!
画像提供 / 本人(瀬川真帆)
私はサロモンの「スピードクロス」というトレッキング用のランニングシューズを愛用しています。もう10年以上の付き合いで、まるで私の足の一部のように感じています。青いピッチに映える色とりどりのシューズを、その日の気分やユニフォームに合わせて選ぶのが楽しみなんです。全部で7色のシューズがあって、それをローテーションで使っているので、一足の寿命は大体1年くらいですね。
画像提供 / 本人(瀬川真帆)
ボールを扱うスティックはベルギーブランドのOSAKAを使っています。このブランドには特に思い入れがあって、プレー中に手に感じる質感やフィールド上での反応が私のプレースタイルにぴったり。この二つのギアはただの道具ではなく、私のプレーを支える重要なパートナーです。
シューズに関しては、毎年サロモンから新しいモデルが出ると、今年のモデルはこの色とこの色がありますがどうですか、と提案してもらい、その中から選んでいます。基本的にピッチが青いので、派手な色のシューズを選ぶことが多いです。足が小さいので選べる靴が限られていますが、サロモンのシューズはグリップ力が高く、ランニングシューズっぽいスマートな形状が私の足に一番合っているので、ずっと愛用しています。
シューズもスティックも、ただの道具ではなく、私の一部。それは私の物語を紡ぐ大切なパートナーなんです。
vol.3につづく
瀬川 真帆
1996年6月23日、岩手県出身。フィールドホッケー選手。幼少期に長期におよぶ闘病生活を乗り越え、小学生の時にホッケーを始める。中学時代には全日本中学大会、高校時代にはインターハイ優勝、海外遠征(U-16、18)への参加など多くの実績を残し、卒業後はソニーHC BRAVIA Ladiesに所属。スペイン・レアルソシエダへのレンタル移籍を経験し、2021年から東京ヴェルディホッケーチームに所属。そして東京オリンピックに日本代表として出場。並行してOLとして働きながら、モデル活動も行うなど多様なキャリアを実現している。
Hair&make:Marijo Nishizawa(PUENTE Inc.)
Photo:Rika Matsukawa