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小野伸二が第二の故郷「コンサドーレ札幌」に残したもの・伝えたかった想いとは

日本史上最高と称された天才・小野伸二。彼は現役最後の地、コンサドーレ札幌に何を残し、どのようにして偉大な成長を遂げ、これからどんな道を歩むのか。エピソード1では、引退を発表した44歳の誕生日から12月3日のラストマッチまでを描いた。小野が第二の故郷コンサドーレ札幌に残したもの、伝えたかった想いに迫る。※トップ画像出典/Getty Images

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小野伸二が「コンサドーレ札幌」を選んだ意義

小野は、2023年9月27日44歳の誕生日にInstagramへ「サッカーと出会い39年間もの間、僕の相棒として戦ってくれた“足”がそろそろ休ませてくれと言うので、今シーズンを最後に、プロサッカー選手としての歩みを止めることを決めました」と投稿。今シーズンでプロサッカー生活を終了することを決断した。

高校卒業時にはJリーグの13チームからオファーを受け、浦和レッズでのプロとしてのキャリアをスタート。デビューからわずか3ヶ月後、日本が初出場を果たしたワールドカップに18歳と272日で出場。これは今もなお、日本の最年少出場記録となっている。2001年にはオランダのフェイエノールトへ移籍。その後4ヵ国を渡り歩き、世界へ活躍の幅を広げた。プロサッカー選手として26年、最も長い時間を過ごしていたのが札幌。小野加入以前のコンサドーレは決して大きなクラブとは言えず、J1に昇格しては降格を繰り返す、いわゆる「エレベータークラブ」だった。そんなクラブに小野が加入したのは2014年のこと。J2で資金面が厳しいというデメリットは承知の上で移籍したのには小野なりの考えがあった。

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Source/Getty Images

「自分から何かを求めるよりも、何かを求められたことを達成したいというタイプなので、ただ強くするだけでなくて、みんながワクワクするような楽しいサッカーをしたいというコンセプトに共感したのが大きかった」と小野は語る。

事実、コンサドーレ札幌に加入した小野の姿は若手選手たちに大きな影響を与えた。まず世界的にも有名な選手が誰よりも早くグランドに出てリフティングをしている姿こそが選手たちに響く。また、若い選手が飛躍する過程では一つのミスで自信を失ってしまうこともある。「自信をなくしていくときは、その日の練習の中でなるべく解消させていくことを徹底している。ミスを恐れてしまい、試合に出るのが怖くなってしまうから」と小野は言う。

小野加入から3シーズン目、多くの若手選手がチャンスをつかんだコンサドーレはJ2を制覇し5年ぶりのJ1昇格を決めた。野々村社長が小野に求めたチームを勝たせるプレーと若手選手の育成、その両方が結果となった。

さらに2017年に浦和レッズを解任されたミハイロ・ペトロビッチを新監督に迎えるよう野々村に進言。リーグ屈指の名将を得たチームは、2017年以降、7シーズンにわたってJ1で戦っている。それについてペトロビッチ監督は「J1で7年連続で戦ってこれたのも伸二の功績が大きいです。プロとして長くキャリアを積むのは実力だけでは不十分。人として素晴らしいからこそ、これほど長いキャリアを続けられたのだと思います」とコメント。

ピッチを去る最後まで「サッカーを楽しむ」を体現

ラストマッチまで残り5日。最終戦に向けてアシックスジャパンの西原氏はラストマッチのためのスパイクを持ってきていた。高校生の時からずっと見守り続けてきた西原氏が作ったのは、赤と黒のデザインに愛する家族の名前をシューレースの先にまで施した特別なものだ。東京の自宅に帰っていた小野は小野の母が保管してくれていたユニフォームの数々を見返していた。日の丸を背負い、世界と戦ってきたユニフォームに加え、かつてのチームメイトや世界的な名プレーヤーと交換してきたユニフォーム。その一枚一枚に当時の記憶が刻まれている。

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Source/Getty Images

そしてラストマッチ当日。前日の夜はぐっすり寝られたという小野。「緊張感もなかったし自分でも不思議でした。初めてピッチに立った日を思い出しましたし、対戦相手は浦和というのもなんか感慨深いものがある」

小野のモットー「サッカーを楽しむ」これに応えるようにラストマッチ当日は、3万人を超えるサポーターが札幌ドームに駆けつけた。何かを引き継いでほしい。コンサドーレ札幌に関わるすべての人に対して、そしてお客さんの記憶に残る試合をー。プロとしてピッチを去るとき、盛大な拍手に包まれた。多くのものを与えてくれた感謝の気持ちが表現された瞬間だった。

最後に小野はこんな言葉を残し、プロサッカー選手生活に幕を閉じた。

「2014年に北海道の地に来てからトータル7シーズン過ごさせてもらいました。プロサッカー選手は終わりますけれど、僕自身は変わらずにサッカーを愛し楽しんでサッカーを続けていくので、これからもどうぞよろしくお願いします。最後に皆さんに関係ないかもしれないですが、自分の母が10月17日に旅立ちました。お母さん一言。僕を生んでくれて、そしてこの素晴らしいサッカーというものに出会わせてくれてありがとうございました」

DAZN『SHINJI ONO EP1 : 感謝』より
配信日:2024年6月26日 ※全3回のエピソードを同時配信

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