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インディアンウェルズ・マスターズ:灼熱の大地に輝く新星、日本勢の健闘と共に

深いブルーのコート。その周りを囲む緑が、まるでオアシスのように映える。強い日差しの下でも、そのコントラストはひときわ鮮やかだ。白いラインがくっきりと際立ち、今年もボールが弾むたびに静寂と熱気が交錯した。インディアンウェルズならではの独特な雰囲気が、選手たちのプレーを引き立てる。今年は若手の台頭、次世代の選手たちが中心となった準決勝、男子テニスの新しい時代が幕を開けた。※トップ画像出典/Pixabay

Icon img 9605 1  1 髙橋菜々 | 2025/04/10

インディアンウェルズ・マスターズ、25年ぶりのサーフェス変更が話題に

毎年3月前半にアメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されるATPマスターズ1000「BNPパリバ・オープン」(通称インディアンウェルズ・マスターズ)。男子シングルスは3月4日に予選がスタートし、3月17日に幕を閉じた。今大会の大きな話題の一つは、25年ぶりのサーフェス変更だった。大会直前に発表されたこの変更は、選手たちの間でさまざまな反応を呼んだ。一部の選手は「ボールの弾み方が違う」と変化を感じ取る一方で、違和感なく適応する選手もいた。画面越しに観戦していた私には、プレーの質にどう影響を与えているのかは正直よくわからなかった。ただ、相変わらず美しく整備されたコートの映像に見とれながら、今年も熱戦を楽しんだ。

世代交代を感じた準決勝のラインナップ

予選から激しい戦いが繰り広げられた今大会。特に印象的だったのは、準決勝に進出した選手たちの顔ぶれだ。ここ数年でトップ選手の入れ替わりが進んでいたものの、改めて2000年代生まれの選手が主役になりつつあると実感した。今回の準決勝進出者は以下のラインナップだ。

・世界ランキング3位 C.アルカラス(2003年生まれ)
・世界ランキング6位 D.メドベージェフ(1996年生まれ)
・世界ランキング13位 H.ルーネ(2003年生まれ)
・世界ランキング14位 J.ドレイバー(2001年生まれ)

かつて「BIG4」が支配していた時代を見てきた私にとって、この光景はまるで青春ドラマのキャストが全員年下になった時のような衝撃だった。彼らの存在が当たり前だったからこそ、「新世代」がこれほど力をつけ、中心となりつつあることに改めて驚かされた。

ドレイバー、圧巻のプレーでATPマスターズ1000初制覇

決勝戦は世界ランキング13位のH.ルーネと世界ランキング14位のJ.ドレイバーの対戦。結果は6-2, 6-2のストレート勝ちで、ドレイバーがATPマスターズ1000での初優勝を果たした。今大会が3年連続3度目の出場。これまでの最高成績は2023年のベスト16だった。しかし、3度目の挑戦でついに頂点へと上り詰めた。ドレイバーは準決勝で世界ランキング3位のC.アルカラスと対戦。アルカラスといえば、2023年・2024年とインディアンウェルズを連覇してきた絶対的な王者。しかし、ドレイバーはフルセットの激闘を制し、ついに決勝の舞台へと駒を進めた。

決勝では、とにかく攻撃的なテニスを貫いた。強烈なサーブでサービスゲームを一度も落とさず、ラリー戦では回り込んだフォアハンドをストレートに叩き込む。果敢なネットプレーでプレッシャーをかけ、相手の動きを読んだショットで翻弄。一瞬のチャンスも逃さず、攻撃的なテニスを貫いたドレイバー。試合が終わった瞬間、彼は静かに勝利を噛み締めるような表情を浮かべていた。そして膝をつきながら両手を天に掲げた。その姿は、この優勝がどれほど特別なものだったかを物語っていた。この優勝により、ドレイバーは世界ランキング7位に浮上し、トップ10入りを果たした。「自分はそれに値する」と語った彼の言葉には、確かな自信が滲んでいた。静かに、しかし確実に新世代の台頭は進んでいる。ドレイバーの快進撃は、まさに“下剋上”の始まりを告げるものだった。

錦織が存在感、綿貫が躍進!日本勢が見せた健闘の足跡<

日本勢も今大会で健闘を見せた。なかでも注目を集めたのは、約3年半ぶりに出場した世界ランキング76位の錦織圭。本戦ストレートインで迎えた1回戦は、約3時間に及ぶ激闘となった。ラリー戦では主導権を握り、ゲームを連取。最終セットでは足に不調を感じながらも、強打で攻め続け、攻められればしぶとさを発揮するという錦織らしいプレーで勝利をもぎ取った。惜しくも2回戦で敗退したものの、復帰後の戦いぶりはファンを沸かせた。

今大会の予選には、ダニエル太郎(116位)、内山靖崇(160位)、トゥロター・ジェームズ(181位)、綿貫陽介(349位)が出場。綿貫は自身初の本戦入りを果たし、大躍進を遂げた。本戦では次々と勝利を重ね、ついにはベスト16進出。世界のテニスファンも彼の活躍に注目した。今大会での綿貫の戦いぶりは、間違いなく日本テニス界にとって大きな希望となった。またいつか、彼の快進撃についてじっくり語りたい。