コロナ禍を乗り越えBCL初年度優勝!神奈川フューチャードリームスの軌跡
プロ野球独立リーグのルートインBCリーグに今季から加入した神奈川フューチャードリームスが、10月27日に行われたプレーオフで信濃グランセローズと対戦し、1対0で勝利を収めた。新型コロナウイルスの影響で、開幕は当初の予定からおよそ2ヶ月の延期。無観客試合が続いたシーズンだったが、ファンの前での鈴木尚典監督を胴上げするという最高の形で締め括った。
Junichi Shiratori
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2020/11/05
■東地区チャンピオンシップ:神奈川フューチャードリームス対栃木ゴールデンブレーブス(10月18日 小山運動公園野球場)
34勝17敗8分でレギュラーシーズンを終えた神奈川フューチャードリームスは、東地区地区チャンピオンシップへと進出した。
大量得点に盛り上がる神奈川フューチャードリームスのベンチ
■準決勝:神奈川フューチャードリームス対富山GRNサンダーバーズ(10月21日 海老名運動公園野球場)
続く準決勝は、富山GRNサンダーバーズと対戦。一時は6点あったリードをひっくり返されたものの、7回に逆転。10対9で乱打戦を制した。
この日のヒーローインタビューは、7回に勝ち越しタイムリーを放ったカレオン選手。
両チームの乱打戦にピリオドを打ったのは、8回に登板し、2イニングを1失点に抑えた乾投手(元北海道日本ハム・巨人)。
昨年まで富山に在籍した乾は、「古巣との対戦は楽しみでしたし、良い1日にしたいと思ってマウンドに上がりました。難しい展開の試合でしたが、チームにとっても自分にとっても良い経験になりました」とコメント。
■決勝:神奈川フューチャードリームス対信濃グランセローズ(10月27日バッティングパレス相石スタジアムひらつか)
ドラフト会議の翌日となる10月27日に行われた決勝は、信濃グランセローズと対戦した。スコアボードに並ぶなか、5回に牧田選手のタイムリー2ベースで先制した神奈川。
準決勝の最終回を投げた乾投手が、決勝では先発で登板。5回に挙げた1点を守り切り、見事な完封勝利をあげた。
最後は、前日のドラフト会議で東京ヤクルトスワローズの育成2位で指名された、赤羽由紘選手(信濃)を空振り三振に打ち取り、神奈川の優勝が決定。リーグ参入初年度の優勝は、史上初の快挙だ。
ーールートインBCリーグ初となる、参入初年度の優勝を成し遂げましたが?
鈴木尚典監督:新規参入チームでの優勝という、BCリーグの新しい歴史を作れて本当に良かったです。優勝は頑張ってくれた選手のおかげ。 胴上げされたときは純粋に嬉しかったですね。
1998年に横浜ベイスターズでリーグ優勝と日本一を経験しています。素晴らしい選手たちと一緒に掴み取った今回の優勝は、あの時と同じくらい嬉しいです。
ーー監督として心掛けていたことは?
鈴木監督:監督として心掛けたのは、選手たちに伸び伸びと野球をやらせること。
野球好きな人ばかりが集まったこのチームで、悔いのない野球人生を過ごしてほしいですし、伸び伸びと野球に打ち込める空気を作りたいと思って、今シーズンはやってきました。
ーーかつての横浜ベイスターズのような打撃力が魅力のチームでしたね?
鈴木監督:皆さんには「ネオマシンガン打線」と呼んでいただきましたが、本当にどこからでも点が取れる打線でした。
この日の決勝は、なかなか点が取れない(1−0で勝利)試合展開のなかで、3番の牧田が大事なところで(タイムリー2ベースを)打ってくれました。
そして今日の試合は、乾が頑張って完封してくれました。「一番信頼している彼が打たれたら仕方がない」と決勝に送り出しました。
まさか完封するとは想いませんでしたが、頑張ってくれて本当に助かりましたね。まだ今シーズンは終わったばかりですが、来シーズンも優勝できるように、これからもチームづくりに取り組んでいきたいです。
ーー今シーズンは、新型コロナウイルスの影響で、開幕の延期が決まるなど、大変な一年だったように思います。
鈴木監督:昨年チームが設立されたときには、「野球が盛んな神奈川県には多くの野球ファンがいる。たくさんのお客さんがいる球場でプレーしたい」と思っていました。
でも、新型コロナウイルスの影響で、開幕当初は無観客試合。なかなか慣れないことも多いなかで、選手たちは集中してやってくれたと思います。
シーズン終盤に差し掛かるにつれて、徐々にお客さんも増えてきましたが、来年はもっとたくさんの方々と一緒に野球ができる環境になっていてほしい。
来年はまた、神奈川フューチャードリームスは新たなスタートを切ることになりますが、もっと多くの方に開幕からスタジアムに足を運んでほしいなと思います。
続いて、完封勝利を成し遂げた乾真大選手兼任コーチが登場し、インタビューに答えた。
ーー完封勝利という形でシーズンを締めくくりました。調子はいかがでしたか?
乾投手:調子は万全ではなかったです。「精一杯やれることをやろう」と思ってマウンドに上がったら、結果的に完封という形になりました。
一緒にやってきた後輩も控えているので、「行けるところまで行って、キツくなったら他の投手に託そう」と思って投げました。
実際に7回以降はキツかったです。 頭を使う場面が多くあったので、フル回転させながら投げ切りました。
ーー「 乾投手でダメだったら仕方ない」と、鈴木監督に送り出されたようですね?
乾投手:先発を告げられたのは数日前でした。優勝はもちろん嬉しいですけど、「後輩の選手たちを優勝させてあげたい」という気持ちの方が強かった。なので、みんなが喜んでいるところを見られて本当に嬉しかったです。
皆さんの応援のおかげで優勝出来たと思っています。今日の試合は僕が最後まで投げましたけど、みんなで勝ち取った勝利ですね。
コーチの立場としては、僕が投げるのではなく、「今日のような大事な試合を後輩に託したい」という想いもある。これからも神奈川フューチャードリームスを魅力のあるチームにしていきたい。
続いて、決勝点となる右中間を方向へのタイムリー2ベースを放った牧田龍輝選手が登場。今シーズンのBCLベストナインにも選出された牧田選手だが、前日に行われたNPBのドラフト会議では、指名候補選手として挙げられていたものの、吉報は届かず。優勝の思いと、来シーズンの抱負についても語った。
ーータイムリーを打った打席は、どのような想いで打席に入られましたか?
牧田選手:前日ドラフト会議では、(指名漏れで)悔しい経験をしましたが、良い意味で「来年に向けたスタートを切ろう」という想いで打席に入りました。
簡単に勝てるとは思いませんでしたが、厳しい展開のなかで、貴重なタイムリーが打てて嬉しかったですね。
チャンスに凡退してしまうこともありますが、(3番という)中軸を打たせてもらっている以上は、「打つことが仕事」。そのような意味では、自分のバットで均衡を破ることができて良かったと思います。
ーー鈴木監督を胴上げした感想はいかがですか?
牧田選手:鈴木監督には、メンタル面やバッティングについて、親身に相談に乗ってもらいました。その監督を胴上げすることが出来て、言葉で言い表せないくらい嬉しいです。
個人的には、NPBで活躍して、タイトルを獲ることが目標。残念ながら今年のドラフトで指名されることはありませんでしたが、初年度優勝という素晴らしい形で終えることができました。
平日のナイターにも関わらず、多くのファンの方に応援していただき感謝しています。最後まで、応援ありがとうございました。
写真は10月18日撮影
新型コロナウイルスの影響により、試練の船出を強いられた新球団、神奈川フューチャードリームスは、初年度優勝という最高の結果で締めくくることができた。
まだ、新型コロナウイルスの影響が色濃く残るスポーツ界だが、これまで通り野球が楽しめる日々が1日も早く訪れ、地域とともに球団が発展していくことを今後も期待したい。
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