「柔道団体は意外な形で決着」パリ五輪・日本人メダリストの活躍と注目の戦いを総括(大会9日目③)
日本時間の27日未明にパリ五輪が開幕した。ここでは現地時間の8月3日の(日本時間8月3日〜4日)大会9日目にメダルを手にした選手たちの活躍や、注目選手の戦いぶりを振り返ってみたい。※トップ画像出典/Europa Press via Getty Images
柔道混合団体
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柔道混合団体は男女それぞれ3階級(※)での対戦が行われ、先に4勝した国が勝者となる。なお、3勝3敗で並んだ場合には、電光掲示板に表示されたルーレットで抽選を行って階級を決め、その勝敗によって順序が決められる。
(※)女子:57キロ級、70キロ級、70キロ超級、男子:73キロ級、90キロ級、90キロ超級
日本選手:阿部詩、阿部一二三、ウルフ・アロン、斉藤立、素根輝、髙市未来、髙山莉加、角田夏実、永瀬貴規、永山竜樹、新添左季、橋本壮市、舟久保遥香、村尾三四郎
2回戦 対スペイン戦(4勝3敗)
2回戦で登場した日本は、初戦でスペインと顔を合わせた。女子57キロ以下には、個人戦でまさかの2回戦敗戦を喫した阿部詩が登場した。
阿部は開始1分25秒でいきなり技ありを奪われると、投げ技で1本の判定が技ありに変更される苦境に立たされ、個人戦での悪夢を多くの者が思い浮かべたが…。気持ちを切り替えた阿部は、試合終盤に背負い投げで技ありを奪い、合わせ技1本で勝利を収めた。
だが、男子73キロ以下が対戦する2試合目には、銅メダリストの橋本壮市が登場したが抑え込みで1本負け。そしてリードを奪いたい日本は70キロ以下の試合には、個人戦の雪辱を期す髙市未来が挑み、抑え込みで1本を奪って、2勝1敗でリードした。
さらに男子90キロ以下の試合に登場した銀メダリストの村尾三四郎は、残り1分40秒に外刈で技ありを奪って優勢勝ち。3勝1敗として王手をかけた。
だが、ここから思わぬ形で日本は苦戦する。女子70キロ超に登場した高山莉加は、延長戦突入後に3回目の指導を受けて反則負け。男子90キロ超の斉藤立は、技ありを奪われて優勢負けし、3勝3敗で並んだ両者の勝敗は、第7戦に委ねられることとなった。
ルーレットによる抽選の結果、70キロ以下の試合が行われることが決まり、勝利を収めた高市が第7戦に再び登場。小外刈りで一本勝ちして4勝3敗とし、準々決勝進出を決めた。
全員が見守る中、高市は積極的に攻めていった。高市はポイントを奪って日本が勝利し、準々決勝進出を決めた。
2回戦 対スペイン 4勝3敗
(○阿部詩、●橋本壮市、○髙市未来 ○村尾三四郎 ●高山莉加 ●斉藤立 ○髙市未来)
準々決勝 対セルビア (4勝1敗)
準々決勝に挑む日本は、スペイン戦と大幅にメンバーを入れ替えてセルビアとの対戦に挑んだ。
初戦の男子73キロ以下の試合には、個人でも2大会連続で男子66キロ級の金メダルを手にした阿部一二三が出場した。残り1分27秒で大内刈り、試合終盤の残り30秒でも再び大内刈りを決めて技ありを奪った阿部は、合わせ技で1本勝ちを収めた。
続く女子70キロ以下に出場した新添左季は、2階級下のペリシッチと対戦。序盤は苦戦したものの、残り55秒で内股が決まり、1本勝ちを収めた。
勢いに乗りたい日本は、男子90キロ以下の試合に、81キロ級で金メダルを手にした永瀬貴規を起用した。決め手を欠いた試合は延長戦に突入したが相手に3回目の指導が入り、反則勝ちで日本は3勝目。準決勝進出に王手をかけた。
4試合目の女子70キロ超の試合には、スペイン戦に続いて高山莉加が登場した。だが、開始9秒に足技で技ありを奪われると、59秒にも背負い投げを決められて技あり。合わせ技1本で黒星を喫した。
勝てば準決勝進出の5試合目の男子90キロ超には、個人戦での無念を晴らしたいウルフ・アロンが出場した。ウルフ・アロンは一進一退の攻防が続いた1分18秒のところで大内刈を決めて技ありを奪うと、今度は残り52秒で抑え込みが決まり、合わせ技で一本で勝利を掴むと、この瞬間に日本の準決勝進出が決まった。
準々決勝 対セルビア 4勝1敗
(○阿部一二三、○新添左季、○永瀬貴規、●高山莉加、○ウルフ・アロン)
準決勝 対ドイツ(4勝0敗)
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3試合目の女子70キロ超には、素根輝が怪我で出場できないチーム事情により、3試合連続出場となった高山が畳に上がった。高山の1つ上の階級(78キロ級)の相手に対し積極的に攻め、残り1分6秒に抑え込みで1本勝ちした。
男子90キロ超の選手が戦う4試合目にはウルフ・アロン(28、パーク24)が登場し、100キロ超級の相手に大内刈を決めて1本勝ちし、4連勝で決勝を迎えた。
対ドイツ 4勝0敗
(○新添左季 ○村尾三四郎 ○高山莉加 ○ウルフ・アロン)
決勝 対フランス (3勝4敗)
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前回の東京五輪と同じく、決勝ではフランスと顔を合わせた。3年前は1勝4敗で敗れた相手にリベンジを果たしたい日本は、体重よりも相性やコンディションに軸足をおいた選手起用で金メダル奪還を目指した。
村尾三四郎が同じ90キロ級銅メダリストのヌガヤプハンボと顔を合わせた試合はゴールデンスコアの延長戦に突入するも、開始直後に村尾の内股が決まり先勝し、幸先のいいスタートを切る。2戦目は高山が登場し、女子78kg超級銅メダルのディッコと対戦した。高山が2つ目の指導を受けるなど、攻め手を欠く苦しい展開が続いたが、1分52秒に大内刈で技ありを奪い、そのリードを守り切った高山の優勢勝ちに終わった。
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続く「男子90kg超級」の3戦目には斉藤立が登場し、フランス柔道界の英雄でもあるリネールと顔を合わせた。実績が上回る相手に果敢に挑む斉藤だったが決め手を欠いた試合は延長戦に突入し、7分4秒にリネールが内股でポイントを奪い、試合は決着した。
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4戦目の女子57kg級の試合は、女子48kg級金メダルの角田夏実が、女子57kg級銅メダルのサラ レオニー・シジクと対戦した。2階級の差があり、試合の中で体格差を感じさせる場面も見られたが、角田は必殺の巴投げを決めて勝利を掴み、日本は3勝目。金メダルに向けてあと1勝となったが…。
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阿部一二三(パーク24)が出場し、階級が1つ上のジョアン バンジャマン・ガバと顔を合わせた。阿部が優位に進めながらも決め手を欠いた試合は延長戦に突入したが、ガバが繰り出した変形肩車の前に屈し、惜しくも敗れた。
6戦目は63キロ級の高市と、同階級銅メダルのアグベニェヌが対戦した。高市は果敢に攻めたが、アグベニェヌに外巻込で技ありを奪われ、勝利を掴むことはできなかった。
金メダルの行方は第7戦へ…
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3勝3敗で迎えた両チームの勝敗は、優勝決定戦に委ねられることとなった。階級を決めるデジタル方式のルーレットが示したのは「男子90kg超級」。リネールの登場を意味し、勝利を確信したかのような地元ファンの大歓声が会場から鳴り響いた。
最終戦は3戦目と同様に斉藤立が、フランス柔道界の英雄でもあるリネールと顔を合わせた。実績が上回る相手に果敢に斉藤は果敢に挑んだものの、互いに2つ指導で迎えた6分26秒に大内刈で1本負けし、フランスに敗戦。日本は2大会連続の銀メダルに終わった。
対フランス戦 3勝4敗