【解説】日本人初の快挙!“フェンシング男子 エペ 個人”金メダル 加納虹輝
パリ五輪のフェンシング男子エペ個人に出場した加納虹輝選手は、決勝でフランス代表のヤニク・ボレル選手に勝利して金メダルを獲得した。フェンシング個人種目での金メダル獲得は、日本人初の快挙だ。※トップ画像出典/Getty Images
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前回の東京大会では、日本男子エペ団体のエースとして日本フェンシング界初の金メダルを獲得を牽引した加納選手は、前評判通りの実力を見せつけて順調にトーナメントを勝ち上がった。
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ティボル・アンドラーシュフィ選手(ハンガリー)と対戦した準決勝では、試合終了5秒前で追いつかれて延長戦に突入したが、延長戦でも積極的な攻めを見せ、15-13で勝利した。
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決勝では、3回戦で見延和靖選手、準々決勝で山田優選手と日本勢を次々破って勝ち上がったヤニック・ボレル選手(フランス)と対戦した。地元の大声援を味方につけたボレル選手に対して、加納選手は、素早く矢のように飛び込む得意技の『フレッシュ』を武器に得点を積み重ねて15-9で快勝。東京五輪の男子エペ団体種目に続く、2大会連続の金メダルを手にした。なお、フェンシングの個人種目で日本選手が金メダルを獲得するのは初の快挙だ。
<五輪での戦績>
2回戦:14-12 金在元(韓国、キム・ジェウォン)
3回戦:15-4 王子傑(中国、オウ・シケツ)
準々決勝:15-6 ルスラン・クルバノフ(カザフスタン)
準決勝:15-13 ティボル・アンドラーシュフィ(ハンガリー)
決勝:15-9 ヤニック・ボレル(フランス)
〈プロフィール〉
1997年12月19日に愛知県あま市で生まれた加納虹輝選手は、4歳から器械体操に打ち込み、体幹の強さと素早い動きを身に付けた。加納選手がフェンシングの魅力を知るきっかけは小学6年生のとき、北京五輪で銀メダルを獲得した太田雄貴選手の活躍する姿をテレビで見て感銘を受けたことだった。中学時代から太田選手と同じフェンシングのフルーレに打ち込み、5円玉を突く独自の練習で実力を磨いたが、当時は目立つような成績を残すことはできなかった。
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加納選手の存在が多くの人に知られるようになったのは、フェンシング強豪校として知られる山口県立岩国工業高等学校への進学がきっかけだった。高校時代に遊び感覚で出場したエペの試合で優勝したことを機に、フルーレからの転向を決断。器械体操で培ったフットワークと腕を動かすスピードの速さを武器に実力を伸ばし、高校1年の冬には世代別日本代表に初選出、高校3年ではインターハイで優勝を成し遂げ、ジュニア世代を代表する選手として広くその名が知られるようになった。
早稲田大学に在籍していた2018年にはアジア大会の個人種目で銅メダル、団体で金メダルを獲得。2019年にはワールドカップ(カナダ)優勝を勝ち取るなど実績を積み重ねて、日本のエースとして認知度を高めていった。そしてコロナ禍の影響により1年遅れで開催された2021年7月の東京五輪では、見延和靖選手、山田優選手、宇山賢選手らと男子エペ団体に出場し、日本フェンシング界初の金メダルを手にした。パリ五輪でもフェンシング界初の個人種目での金メダル、団体で銀メダルを獲得。メダルラッシュに沸いた日本フェンシング陣を牽引した。