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2024年Jリーグ入場者は1100万人を超えたが…日本サッカー界が抱える課題を考える

得点力からエンターテイメント性まで優れている森保ジャパンが、多くのサッカーファンを魅了している。2025年3月に控えたバーレーン、サウジアラビアとの戦いも盛り上がること必至だ。日本において“サッカー”はいったいどれだけ世の中に浸透しているのだろうか。※トップ画像出典/PhotoAC

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日本サッカー界の目指すべきもの

日本サッカー界にとっての強さの先にあるゴール。「ワールドカップ優勝」や「競技人口増加」といった具体的なゴールも考えられるが、「サッカーでみんなが笑顔になれること」といった抽象的なゴールも考えられる。サッカー界全体におけるゴールとはいったいなんだろうか。

スポーツコメンテーターの桑原学氏はサッカー界の“ゴール”を「サッカーファミリー全体の潤い」とし、「日本サッカーに関わる全ての方が安定したというか、収入も含めて生活ができるような状態」とした。フリーの中継スタッフやライター、育成指導者、下部リーグ選手などの善意に頼って成り立っている仕事が少なくないことがその根拠だ。結果的に善意の搾取のように捉えられる仕事が存在しているのは問題であり、サッカーファミリー全体が心身ともに豊かになるのがゴールなのではと語った。

また、野村明弘氏は多くの人にとってサッカーが「日常」になることをゴールとし、「コアな人たちだけのものになってほしくない」と話す。例えば、サッカーが好きでなくてもある程度の情報が自然と耳に入って来たり、誰もがなんとなくフットボールに触れたりする日常が、日本サッカー界が目指すべきゴールにふさわしいと持論を述べた。

「JFA2005年宣言」を実現させるには

果たして、日本で“サッカー”は浸透してきているのだろうか。日本サッカー協会が2005年に掲げた目標「JFA2005年宣言」の進み具合を見てみよう。

JFA2005年宣言は、2002年の日韓ワールドカップをきっかけに2005年に作られた目標だ。その中に、サッカーファミリーの1,000万人到達が目標として盛り込まれている。2023年シーズンのJリーグ総入場者数は、J1は5,811,987人(1試合平均18,993人)、J2は3,189,591人(1試合平均6,904人)、J3は1,141,166人(1試合平均3,003人)と寂しい数字となっており、目標への到達が危ぶまれたが、2024年シーズンの入場者数(J1、J2、J3合わせて)は最終的に1100万人(YBCルヴァンカップなどを除いたリーグ戦のみ)を超え、なんとかこの目標を達成したといえるだろう。現在の日本代表の“強さ”もあるが、その人気ぶりと盛り上がりぶりからもサッカーは徐々に日本全体に浸透しつつあるのかもしれない。

しかし「これまでサッカーファミリー人口が思うように増加しなかった原因」が完全になくなったわけではないし、今後も日本サッカー業界に付きまとう課題といえるだろう。

例えばいくつかある課題のうち、真っ先に挙げられるのは放映権料の高騰。スタジアムに足を運ばず放送で観戦するためには、高い視聴料を払わなければならない。気軽にサッカーにアクセスできない現状を危惧しつつ、細江は「今世界的にもみんな放映権が高すぎだろうって言い始めている段階だと思うので、それがうまく変わってくれることに期待したいです」と語る。ここは今後も引き続き考え、向き合っていくべきことだろう。

多くの人にサッカーを好きでいてもうらうために

ワールドカップなどで世間が盛り上がると、スクールでの子どもの体験希望者が増える傾向がある。しかし、受験や進学のタイミングで辞めてしまう人が多いと小澤一郎氏は言う。「別に辞めなくていいと思う。サッカーに関わったり、たまに週1回、月1回蹴ってもらうとか、サッカーになんとなく関わりを持ってもらえると全然違ってくるかなと思いますけどね」と話す。細江も「一生懸命頑張ったサッカーの記憶が楽しくて楽しくてしょうがなかったっていう風にしないといけない」と、サッカーの体験を提供する側の課題にも言及した。

また、続かない理由として、桑原はプロサッカー選手の収入について触れた。J1などのトップクラスの選手は別として、下部カテゴリーの選手の大半は潤うほど稼げていない。「J3でもすごくいい暮らしができるっていう状況になれば、目指す子も増えるでしょうし夢が見られるんですけど、そうじゃない現実がある以上やっぱり進まない」と話す。

日本サッカーが普及していくためには、乗り越えるべき課題がたくさんある。そこに関わる1人ひとりがその課題を自分事として捉えるだけでも、サッカーファミリーの広がりに繋がっていくのかもしれない。

2026年のFIFAワールドカップ、その盛り上がりはこのままいけば過去最高になりそうだ。この盛り上がりをさらに“日本サッカー”に人気につなげていきたいところだ。



「Football Freaks#112 W杯優勝?競技人口の増加?日本サッカーのゴールとは」(2023年12月27日配信)

*Les informations contenues dans cet article ont été modifiées et diffusées en fonction du contenu au moment de la diffusion.