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劣勢でも諦めず、最後の一球まで戦い抜く。ボッチャ・小川祐太郎が、競技から学んだ「絶対に諦めない心」

東京パラリンピックの正式種目「ボッチャ」。赤・青それぞれ6球ずつボールを投げて、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、いかに近づけるかを競うスポーツだ。そのルールから “地上のカーリング”と呼ばれ、年齢・障害の有無を問わず誰でも手軽に楽しむことができる。簡単なルールとは裏腹に、選手のメンタルが勝負を大きく左右する奥の深さも、この競技の魅力の一つだ。今回は「全国ボッチャ選抜甲子園(団体)」で優勝を果たし、2019年日本ボッチャ協会育成強化選手の小川祐太郎選手に話を伺った。

Icône 70090528 511982836063813 5722354386395463680 nSatoshi Dairaku | 2019/12/10
――ボッチャを始めたきっかけを教えてください。 
 
Ogawa:中学生1年生で村山特別支援学校(東京)にきて、最初の体育でボッチャの授業を受けたのが、この競技との出会いです。ボールを見て「こんなスポーツがあるんだ!」とびっくりしましたね。実際にプレーしてみると頭も使うし、自分が投げたボールが的のジャックボールに寄った時の喜びとか一喜一憂できたので、このスポーツは本当に面白いんだ、と実感しました。 
 
――ボッチャは、使うボールの種類が色々あるんですよね? 

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Ogawa:はい。スウェードの素材のボールや、牛の革など本革を使ってあるボール、合成皮革のボールと、主に3種類あります。選手によっては、ボールを寄せたいとき、弾きたいときなど場面ごとに使い分けるんです。
 
――そうなんですね。ボッチャ歴はどのくらいですか? 
 
Ogawa:本格的に始めたのが中学3年生の時からなので、今年で4年目になります。 
  
――約4年間プレーされてきて、小川選手はどのようなところにボッチャの魅力を感じていますか? 

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Ogawa:局面がころころ変わってくるので、最後まで何が起こるか分からないところです。一球で白いジャックボールの配置が変わったり、赤と青のボールの配置が変わったり。たった一球で局面がガラリと変わるんです。最後の一球で勝敗が決まる、という凄い試合もあるので、本当に最後の一球まで分からない。そこがボッチャの大きな魅力ですね。
 
――本当に最後の最後まで気が抜けないスポーツなんですね。その「最後の一球」で泣いたことはありますか? 
 
Ogawa:よくあります(笑)。「最後の一球、あそこに入れておけば…」って。ただその反面、「寄せないと負けてしまう…」というときに寄せることが出来た試合もありますし、実際に最後の一球で勝利を決めたこともあるので、たとえ劣勢でも絶対に諦めないことの大切さを感じています。 
 
また、試合での失敗談でいうと、以前に緊張しすぎて食べられないことがあって…本当にあの時は後悔しているんです。 
 
――それはいつ頃ですか? 

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Ogawa:約1年前のことです。だからそれ以降は、食事・睡眠は意識していますね。やはり試合前にしっかり食べて、しっかり寝ておくとコンディションは完璧になりますから。失敗を含めいろんな試合を経験してきて、自分の試合までのコンディションの持っていき方がだんだん分かってきました。現在は、試合の一週間前からは本番に備えて疲れを残さないよう休みながら1日を過ごしています。 
 
――ボッチャは障害によってクラス分けされていると思いますが、小川選手はどのクラスになるのでしょう? 
 
Ogawa:僕のクラスは「BC4」クラスと言って、脳性麻痺以外の選手たちが行う、比較的新しいクラスです。逆に「BC1」「BC2」は脳性麻痺の障害を持つ選手のクラス。「BC3」は自己投球ができない最も障がいの重いクラスで、アシスタントによるサポートがつきます。 
 
BC4クラスには、僕のようにパワーのない人もいれば、力強いボールを投げるパワフルな選手もいるので、けっこう選手間に力の差があるんですよ。けど、パワーがない人はないなりにジャックボールの周りに自分のボールを固めたり、パワーがある人ならどんどんボールを弾いたりと、自分に合わせた戦略が重要になってくるんです。 
 
――奥深いですね…。小川選手は試合中、どんな戦略を練りながらプレーされているのですか? 

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Ogawa:相手がやり難くて、自分がやりやすい戦略を考えています。例えば、ボールを手前に置いて相手を邪魔した後に、また自分のボールを寄せたり。そういう相手の嫌がることを考えながらプレーしています(笑)。なので、ボッチャには個人戦と団体戦があるのですが、みんなで考えながら良い戦略を導き出すことが重要な団体戦が得意ですね。 
 
でも最近、個人戦も面白くなってきたんですよ。というのも、ボッチャは1試合で使える球数が6球で、3対3のチームで戦う団体戦は一人2球ずつ。一方で個人戦は6球全て一人で使えるので、色々なボールを選択できますし、個人戦ならではの戦略の立て方もあって面白いです。 
 
――ただ、3人で戦う団体戦だと、個人戦よりプレッシャーが大きくなりませんか? 
 
Ogawa:いえ、僕の場合、団体戦の方が緊張しますね。1球失敗すると他のメンバーの足を引っ張る場面もあるので。あと他にも2対2で戦う「ペア戦」もあって、BC4クラスの国際大会は個人戦とペア戦があるんです。 
 
――小川選手は国際大会で個人戦とペア戦、どちらかで出場したい、という希望はあります? 

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Ogawa:どっちも出たいですけど、味方同士で話し合って戦略を立てる、というのが好きなので、個人的にはペア戦に出てみたいですね。 
 
――ちなみに、試合で有効な戦略を考えるために、日常生活でボッチャに役立つようなことは何かされているのでしょうか? 
 
Ogawa:僕はよく将棋をやっています。ボッチャはすぐに局面が変わるので、つねに先を読んでいかないといけない。ですので、一手先、二手先を読むことが必要な将棋は、ボッチャと一緒にやるとプレーにいい影響を与えると言われているんです。なので「ボッチャをやる人は将棋も一緒にやった方がいいよ」という人は多いんですよ。 
 
――確かに、将棋をやることで競技の練習以外の時間も、戦略を練る知能の使い方を養うことができますね。では、競技人生を通して得た“学び”を教えていただきたいです。 

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Ogawa:やはり、最後まで諦めないことですかね。ボッチャに出会うまでは、やることやること、すぐに妥協したり諦めたりするところがあったんですけど、競技を始めてからは「諦めないで進めた方が、いいことがあるんだな」ということを実感しました。最後まで諦めないで何事にも取り組もう、という気持ちの大切さ、そして強さを、ボッチャからは学ぶことができたんです。 
 
――ありがとうございます。今後の目標をお聞かせください。 
 
Ogawa:まずは国内の大会で勝ち上がって、国際大会に出場できるようになることが目標です。そしてその先のパラリンピック出場を目指していきたいと思っています。
 
――最後に、ボッチャを通してどんなことを伝えたいですか? 
 
Ogawa:初めてボッチャに出会った時、「車椅子に乗っている僕でもスポーツを楽しむことが出来るんだ」と思ったんです。ボッチャは障害者も健常者も一緒にできるスポーツ。だからボッチャを通して、健常者の方と障害者、お互いがより理解しあって欲しいなと、僕も選手活動を通じて伝えていきたいですね。


Interview/texte/Satoshi Daigaku
Montage/Photographie/Chisho Sato


<インフォメーション> 
 
小川選手も参加する「第21回日本ボッチャ選手権大会」は、12月20〜22日に愛知県豊田市にある「スカイホール豊田」で行われます。 
 
会場:スカイホール豊田(豊田市総合体育館)
〒471-0861 愛知県豊田市八幡町1丁目20
TEL : 0565-31-0451