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障害があっても、一歩を踏み出す勇気を。ボッチャ界のホープ・宮原陸人が競技を通じて伝えたいこと

令和に入り、各スポーツ界では若い力が台頭している。ゴルフ界では、日本人女子選手として樋口久子選手以来、42年ぶりの海外メジャー優勝を果たした20歳の渋野日向子選手。バスケ界ではNBAドラフトでワシントンウィザーズから、日本人初の一巡目指名を受けた、21歳・八村塁選手が一気にスター街道を駆け上がった。そして、その波はボッチャ界にも確実に押し寄せてきている。今回スポットを当てるのは、現在、東京パラリンピックに向けて急成長を遂げている17歳の宮原陸人選手だ。昨年12月に行われた「日本ボッチャ選手権大会(個人)」で3位に入賞すると、今年の「関東ボッチャ選手権大会(個人)」では準優勝、「東京ボッチャ選手権大会(個人)」でも優勝を果たすなど、約2年間で数々のタイトルを獲得している。そんな次世代のホープに、ボッチャの魅力や、競技を通じて伝えたいメッセージなどを語ってもらった。

Icône 70090528 511982836063813 5722354386395463680 nSatoshi Dairaku | 2019/12/11
――ボッチャを始めたきっかけを教えてください。
 
宮原:中学3年生の時に、高校は普通校に通うか、特別支援学校に通うか迷っていました。その時、特別支援学校でボッチャの講習会があって、それに参加してみたら「車椅子の自分でも、楽しく運動ができるんだ」と感じることができたんです。そして同校にはボッチャ部があり、部員のみんなと「全国ボッチャ選抜甲子園で日本一になりたい」と思ったことが、競技を始める決め手となりました。
 
それに加えて、昔から球技が好きだったのも理由の一つです。僕は読売ジャイアンツのファンで、坂本勇人選手や丸佳浩選手が好きなので野球も観ていますし、それ以外にもサッカーだったり、最近盛り上がったラグビーW杯も見ていましたから。
 
――いろんなスポーツが好きなんですね! ボッチャには障害によってクラス分けがありますが、宮原選手のクラスは?

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宮原:僕は「BC4」クラスです。このクラスは、例えば自分もそうなんですけど、筋ジストロフィー(※骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称)などの重度四肢機能障害のある選手が行います。
 
――実際にプレーしてみて、ボッチャはどんなところが魅力だなと感じましたか?
 
宮原:一見シンプルなスポーツなんですけど、実は奥が深くて、色々な戦術や技を使ってミリ単位の細かい戦いが繰り広げられていたり、最後の最後まで何が起こるか分からないところが魅力だと思います。
 
――戦術でいうと、ボッチャは攻め方で大きく分けて、パワータイプと戦略で攻めるタイプがあると思います。宮原選手はどちらですか?

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宮原:僕はどちらかというと「戦略タイプ」ですね。相手がボールをジャックボールの側に寄せたら、それをどう弾くかとか、ジャックボールを奥に押し込んで後ろのボールに寄せるとか。そういった戦術を考えることが好きなんです。家ではお父さんとも、つねに食卓で戦略について話し合っていますよ。
 
――お父さんと二人三脚でボッチャに取り組んでいるんですね。
 
宮原:そうですね。家族とは仲が良いので(笑)。体を動かす時や、ボッチャの練習を行う時はお父さんが手伝ってくれるので、とても助かっています。
 
――そういった体を動かすことを含め、ボッチャ選手として日常生活から気をつけている部分は何かありますか?
 
宮原:あります。僕は右手で投げるのですが、右手を下にして寝てしまうと、起きた時に右手を痛めてしまうんですね。だから利き腕に体重をかけないように寝方は注意しています。
 
――大事な“商売道具”ですもんね。では、競技練習以外で、ボッチャに役立つようなことは何かされていますか?

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宮原:たまに学校でオセロをしています。一見、ルールとしては単純ですが、突き詰めれば戦略はすごく深いので。あと、これはほとんど趣味ですが、樹脂粘土を使ってミニチュアフードを作っています。
 
――食品サンプルみたいな感じですか?
 
宮原:以前は体験できるお店に通って食品サンプルを作っていましたが、最近は自宅でもっと小さいサイズのミニチュアフードを作っています。僕はもともと、そういう細かい作業が好きですから。
 
――手先が器用なんですね。それが投球の繊細なコントロールに繋がっているように思えます。競技の話に戻りますが、ボッチャは団体戦(3対3)と個人戦で戦い方がだいぶ変わる中で、宮原選手はそれぞれに得意・不得意はあるのでしょうか?

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宮原:はい、僕は個人戦の方が得意ですね。ボッチャは個人でも団体でも1試合で使える球数は6球なのですが、後者だと1人2球ずつの配分になります。だから1球のミスでゲームの勝敗に響いてしまうので、1人でやるよりも緊張してしまうんですよ。それに対して、個人戦は6球全てを使って自分で試合を組み立てられますから、たとえ1球ミスをしても、そのあとカバーできるので気持ち的には楽なんです(笑)。
 
――3人と1人では、試合でかかるプレッシャーの大きさが全く違いますもんね(笑)。では、約2年間の競技人生を通じて何か学んだことがあれば、ぜひ教えてください。
 
宮原:僕はボッチャから「継続して努力することの大切さ」を学びました。というのも、以前に一週間ボッチャから離れたことがあったのですが、それだけでフォームの形が崩れ、休む前の状態に戻すのにすごく苦労したんです。その大変さを知って以降は、できるだけ間を空けずに継続して取り組む姿勢を大切にしています。

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――ありがとうございます。今後の展望をお聞かせください。

宮原:直近では、12月にある「日本ボッチャ選手権大会」で優勝することが目標です。これに優勝すると、確定ではないですが、来年の東京パラリンピック出場の可能性がありますから。そして、その夢が叶った時には、絶対にメダルを取って日の丸を掲げたいですね。
 
――期待しております! 大会では、ボッチャのどんなところを見て欲しいですか?
 
宮原:ボッチャは最後まで何があるか分からない競技なので、その緊張感を一緒に生で見て味わってもらいたいと思います。
 
――最後に、ボッチャを通して伝えたいメッセージがあればお聞かせください。
 
宮原:なにか障害を持っている人でも、やりたいことに対して躊躇せずにチャレンジして欲しいです。僕は、その一歩を踏み出す勇気をたくさんの方に与えるためにも、ボッチャで結果を出して良い報告ができるように頑張ります。


Interview/texte/Satoshi Daigaku
Montage/Photographie/Chisho Sato


<Informations>
 
宮原選手も参加する「第21回日本ボッチャ選手権大会」は、12月20〜22日に愛知県豊田市にある「スカイホール豊田」で行われます。
 
会場:スカイホール豊田(豊田市総合体育館)
〒471-0861 愛知県豊田市八幡町1丁目20
TEL : 0565-31-0451